5年ぶりの時計職人
インタビュー記事の勉強をしたくて、
POPEYE3月号「仕事とは?」を読みはじめた。
この本を読みながら、昨夏におよそ5年ぶりに再会した、
23歳の時計職人を思い出す。
彼と出会ったのは、「学展」という美術展のアルバイトだった。
当時から、「時計職人を目指している」と話していたけれど、
きっちりと夢を叶えていた。
時計職人になりたくて、腕時計メーカーの集まるスイスに留学したこと、
時計って何なのか、をご飯を食べながら、語りまくってくれた。
「時計ばっかりで、ぼくの話、つまらないですよね?」
と何度も何度も訊かれたけれど、
むしろ、心がワクワクして、
遠慮せずにもっと話してくれないかな、とさえ思っていた。
実はそれまで時計に対して愛着がなかった私だったけど、
時計職人の話を聞いた帰り道は、
このアイテムは、人を夢中にさせる魅力があるのだ、
と自分の時計をまじまじと眺めてしまったっけ。
好きなことを仕事にするべきだ、とか、
自分の仕事を好きになろう、とか
そういうのではなくて、
好きで好きでたまらないことを、ただやっているだけっていう人を眺めて、エネルギーをもらった感じ。
明日も、きっと時計職人は、
真剣な顔で時計を修理しているんだろうなあ、と想像したら、
自分も、もっと遠くに行きたくなった。